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【週末読む、観る】(3)『チャーチルが愛した日本』大きかった母の存在 (3/4ページ)
■『広告放浪記』浅暮三文著(ポプラ社・1680円)
評・わかぎゑふ(劇作家・演出家)
《誰でもする「我慢」と「貧乏」》
浅暮三文の近著『広告放浪記』を読んだ。きっと日本中の誰よりも楽しんで読んだひとりだったと思う。
なぜなら私は昭和34年生まれ。彼と同い年である。しかも彼が就職した年に東京に芝居の勉強をしに上京した。そして彼が東京にたどり着くころに反対に、失恋して大阪に戻ってきた(そんなことどっちでもいいですか…)。
だから、私が去ったすぐ後の大阪の街の様子が書かれていたのでとても楽しく読んだ。そば屋の瓢亭が出てきた件(くだり)は嬉(うれ)しかった…。
1980年代初頭、私たち世代は、「お前ら若い者はなんにもできへんしな」と言われ先輩から執拗(しつよう)にアホ扱いされたものだった。入った会社の部長から遅刻しただけで「学生運動の奴らがムチャクチャやさかい、お前らもやろう」と言われた友人もいた。ま、彼は就職経験のある演劇人なので、話が大きくなっているかもしれないが…。
いずれにせよ、われわれ世代が期待されていなかったことは確かだ。真上にいる団塊世代、そして少し下の「宇宙人」と言われた自由な世代に挟まれて隙間(すきま)世代といわれているそうだ。「ほんまどないせぇちゅうねん!」と20代をジレンマで過ごしたものだった。
この本の中の主人公アサグレ君もまったくそうだ。報われない若者である。大阪の片隅に居て、貧乏の真っただ中。立ち飲みくらいにしか行けず、いつかは座って飲みたいと思っていた。という一行には大笑いしてしまった。
誰にでも貧乏時代がある。人生には経験値が必要だと分かっていても、若者は「いつまでぇ?」と叫びたいものである。
ぜひぜひ、今年就職したばっかりの若者に読んでほしい一冊だ。
そして「どや、みんな若いころは我慢するもんなんや。わしらもした。お前らももうちょっと我慢せぇよ!」というおっさんの叫びを受け取ってほしいと思う。お父さんに直接言われるより、効くと思うので。いやほんまに。
あさぐれ・みつふみ 関西大卒。広告代理店勤務などを経て作家に。