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【週末読む、観る】(2)『カーブボール』「欲しかった情報」を「事実」に (2/5ページ)
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■『砂漠論』工藤庸子著(左右社・2415円)
全国で順次公開中の映画「ランジェ公爵夫人」。原作は文豪バルザックの小説で、その新訳を手がけた仏文学者による時宜を得た評論・エッセー集である。
冒頭の表題作「砂漠論」では砂漠をキーワードに、ナポレオン遠征を含むヨーロッパ文明と文学を縦横に論じ、最終章では「貴婦人が砂漠に憧(あこが)れるとき」と題して、ヒロインの心理の深層を読み解いていく。
新訳を終えた著者が「訳者あとがきでは物足りない」という思いに突き動かされて書き下ろしたとあって、この章は、公爵夫人が焦がれた「灼熱(しゃくねつ)の砂漠」さながらの熱気を帯びる。
合わせ鏡のように置かれた2つの章の間には、フランス古典文学をめぐるエッセーや評論、文芸誌「文学界」などでの書評も収められている。
■『岩倉具視』永井路子著(文芸春秋・1600円)
明治維新の立役者として知られる岩倉具視。明治4年から2年間、木戸孝允、伊藤博文、大久保利通ら107人を率いて米欧視察するなど、西洋文化受容の華々しい活躍が知られる。
しかし、維新前は尊王攘夷派の排斥を受けて出家し幽居したり、孝明天皇毒殺の首謀者であるとの説が流れたりした。岩倉の実像はどんなものなのか。
『炎環』で直木賞を受けて40年余、子孫に会い、資料収集を続けた筆者が「これを抱えつづけることで私は死なずに生きてきた」と記す本書は、冒頭で「手擦れたキー・ワードを一切はずす」ことを宣言する。「尊王攘夷、佐幕、王政復古。そしてできれば『明治維新』も…」と。下級公家から右大臣まで上りつめた人生。丹念な検証による毒殺否定が興味深い。