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【週末読む、観る】(1)花田紀凱の週刊誌ウオッチング「ライバル誌の勝負がこれほどハッキリ出たことも珍しい」 (2/5ページ)

2008.4.27 08:55
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【書評倶楽部】

 ■『天文歳時記』海部宣男(角川選書・1575円)興福寺貫首 多川俊映

《詩歌の中に探った宇宙》

 数年前、モンゴルの草原に一夜眠った。その夜空に輝く星屑(くず)のものすごさに、言葉を忘れた。ほうきぼし(彗星)というのも、−−けっこうあるんだ。と、夜空のあちこちで繰り広げられる天体ショーをしばらく楽しんだ。

 彗星の本体は氷と砂などの微粒子。「普段は太陽系のはるか外縁をめぐっているが、時折太陽近くまで落ちてくると太陽の熱で蒸発し、長大な尾を引く」のだが、「彗星は、詩歌に詠まれること極めて乏しい天体だ。洋の東西を問わず、凶兆として恐れられていたからである」と、本書。

 それでも『枕草子』の「矛(ほこ)星」、定家の日記にある「奇星」をぬかりなく紹介する著者は、前国立天文台台長で、すばる望遠鏡(ハワイ)建設の先頭に立った科学者だ。

 海部さんは学究のかたわら、先人たちが宇宙・天体にどのように向き合ってきたのか、それを古今東西の詩歌の中に探ろうとした。その渉猟の範囲は、半端でない。

 「かくいう私は、まだ皆既日蝕を見たことがない」とはアレレだが、中学時代に見た部分蝕で、撮影の成功を喜ぶより心を奪われたのは、「木の間を洩(も)れる陽光が、三日月形に欠けた太陽の像を無数に地面に落として揺れる光景だった」と告白している。そういう美の感性が、本書を生んだのだろう。

 それにしても、太陽の光が地球に届くのに八分、夜空の星の光は、「十年から千年かけて宇宙を旅してきて、私たちの眼に入る」という。

 そして、そういう宇宙は、実に百三十七億年前から膨張しているらしいのだ。宇宙のとりとめもない時空に、こんにちただいま・ここにいる不思議さ−−。本書は、それを改めて想起させてくれる。

 茫漠(ぼうばく)とした宇宙の中心はどこか。著者が現代川柳の「立ち止まるここが宇宙のどまんなか」を引いているのも愉快。

 たがわ・しゅんえい 平成元年から興福寺貫首。「天平の文化空間」の再構成を目指して境内整備を進めている。

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