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【青雲の大和】(198)この日のために (2/2ページ)
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鎌足は改新にそなえてあらかじめ調べていたのであろう、即座に答えた。
「おいおい、それ、われも出すのか」
私地私民の禁止は皇太子といえども例外ではない、ということに気づいたのか、中大兄はちょっとおどけたふうに鎌足にきいた。
「あたりまえでございましょう」
鎌足はぴしゃりといった。
「皇子が蘇我を倒されましたのは、なんのためでしたか。この大和の国を根底から改革するためではございませんか。皇太子たるお方は、その先頭に立っていただかねばなりません」
そういう鎌足の真剣な表情を、学問の師である日文が眼を細めるようにしてみつめている。教え子がここまで育ったか、という顔である。
「わかった、わかった、その線でやってくれ」
中大兄は陽気にいった。自分がやりこめられているのを、むしろ楽しむかのようである。
−−これでこそ改革は成せる。
玄理は思った。
この主従がいて、この師弟がいる。絶妙の組み合わせである。あるいは百年に一度、千年に一度のことであるかもしれない。
あの聖徳太子の時代はどうであったか、と玄理は考えてみた。太子のみが傑出していたのではないか。ためにすべての改革は半端なものに終わり、たとえば冠位十二階の制でも、蘇我宗家の者はその位階から超越した存在として遇されているのである。
それにくらべて、大化改新はどうか。皇太子の中大兄自身も公地公民制を守らざるをえないほど、徹底したものになっている。
−−われらはすでに聖徳太子を超えた。
玄理は身がふるえるような感慨をもって、そう思った。