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【青雲の大和】(197)この日のために (2/2ページ)
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日文の案に鎌足が即座に乗ってきた。
「ついては両先生から皇子(みこ)に主旨を説明していただくということで、いかがでしょう」
よろしい、それでいこう、ということになって玄理、日文が鎌足にともなわれ、中大兄が仮宮(かりみや)に使っている難波(なにわ)の大郡(おおごおり)を訪れたのは、真冬とはいえ明るい日のさす年末の昼どきだった。
刺客、倭馬飼(やまとのうまかい)が襲うのを警戒して、衛兵に前後をまもらせて大郡の宮の門をくぐると、皇太子つきの舎人(とねり)と女官が玄関にでて、国博士(くにはかせ)二人の来訪を待っていた。
大郡の宮は外国からの賓客を迎える、いわば迎賓館として使われてきた建物で、高台の東端にあって眺望はすばらしい。青い水をたたえた大和川の分流がゆるやかに流れるむこうに、生駒(いこま)の山々がうっすらとかすんでみえている。
大郡の接見の間(ま)にはいって待つほどもなく、中大兄皇子が若々しい軽やかな足取りであらわれた。蹴鞠(けまり)でもして、ひと汗流してきたようなさわやかな顔である。
「ようこそ旻師(みんし)、玄理(げんり)師、ここははじめてでしたな」
そういって主座にすわると、すぐに、
「大化改新に関して話があるとか、さっそくうかがわせていただこうか」
と、二人をうながした。
もしここで、皇族の御料地すべてを国家に返上してもらいたいむね述べたてれば、中大兄はさて、どんな顔をされるか。玄理はそれをなかば恐れながら、懐(ふところ)におさめてきた改新の詔(みこと)のりの文案をとりだした。