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【青雲の大和】(197)この日のために (1/2ページ)
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新年の元日に大君から宣(せん)していただく大化改新の原案ができあがると、玄理(くろまろ)と日文(にちもん)はそれを鎌足(かまたり)にみせた。
内臣として執行にあたる鎌足の意見をとりいれるためである。
「ほほう、これは……」
と、鎌足が腕をくみ、じっと瞳をそそいだのは、子代(こしろ)とよばれる皇族の御料地をすべて国家に返上することを規定した文言だった。政権の中核にあって改革を推進する立場の内臣自身が、はやくも難色をしめしたのである。
「これには皇太子の子代もふくまれると、そのように理解してよろしいか」
慎重な言いまわしながら、鎌足がなにを考えているかがわかる発言である。
「もちろん、私地私民の禁止に関しては皇太子も例外ではない。そのことを皆に知らしめてもらいたい」
玄理にしてみれば、この点では妥協の余地はない。
「なるほど臣(おみ)、連(むらじ)、伴造(とものみやつこ)ほか、すべての臣民の土地所有を禁じるのは、改新の精神からいって、とうぜんでありましょう。これはこれで結構ですが、将来の天皇(すめらみこと)たる皇太子にまで、それをあてはめるべきかどうかです」
大化改新の先頭に立ち、全臣民をひきいていかねばならない中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)が、もしこの条項を拒否したらどうなるのか、ということを鎌足は案じているのである。あるいは大化改新そのものが、これをきっかけに曲げられていくのを恐れているのかもしれない。
「この項目については、わたしはつぎの詔勅まで先送りすべきだと考えるが、それはともかく、あらかじめ皇太子の耳にいれ、了解していただくことが、なにより重要だと思う」
日文がいうのは、いわゆる根回しである。
「なるほど、そういたしましょう」