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【青雲の大和】(196)この日のために (2/2ページ)

2008.4.24 16:47
このニュースのトピックス青雲の大和

 日文はそういって、さらに考えを煮つめるように間をとったあと、

「われわれは理想だけを追ってはならないのだ。漢を簒奪(さんだつ)したあの王莽(おうもう)の新(しん)はわずか十五年で倒れた。大化改新もまた、理想を追うだけではたちまち破綻(はたん)するのは、眼にみえている」

 と、述べたてた。

 玄理にしても、もし大氏族が離反したらどうなるかということを考えないではない。しかし、大和の改革は十代のころからの夢であり、あえていえば生涯の目標でもあった。三十年ものあいだ隋、唐で学んだのは、この日のためであるといってもいい。であるからには、いかに現実が困難であっても、そうやすやすと妥協できるか、という思いがある。

「それでは、こうしようではないか」

 私地私民を禁じた第一条をさらにつよめ、皇太子である中大兄(なかのおおえ)をはじめ、皇族がたにあたえられている土地と民を国家に返上してもらうのである。これによって大化改新の精神は、大氏族をふくめすべての臣民の心に浸透するであろう。そのうえで、日文のいう妥協策をもりこむのである。

「しかし、そんなことができるのか。もし中大兄から反対されたら、それまでだぜ」

 日文は案じ顔になっている。

「できる。おれは中大兄皇子と鎌足(かまたり)を信じている。あの二人は唐帝李世民(りせいみん)より上だ。もちろん二人あわせてのことではあるが」

 玄理は笑いもせずいった。

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