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【青雲の大和】(195)この日のために (2/2ページ)
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「これはいかん」
不快なものを吐きだすようにいった。
「こういうものを詔のりの第一条にいれるのは、はっきりいって反対だな」
「まあ、玄理(げんり)の考え方からすれば、そうだろう。しかし……」
日文は木簡の一行を指でしめしながら、
「いまの情勢をかんがみるならば、これは要る」
と、自信をこめていった。
玄理はそこをもう一度読んだ。やはり納得できなかった。
「この故重其禄、所以為民也というところは、どうみても問題がある。大夫(たいふ)つまり重臣がよく治めれば、民は利益をえる、だから重臣の俸禄(ほうろく)を手厚くするのは、民のためであるというのだろう。こんな言い訳じみた説明が詔勅に必要なのか」
そういって、灯火に照らされた机を平手でばんばんと叩いた。
「おぬしのいうところはわかっている。しかし、この大改革をまえに皆、動揺していることもみとめなければなるまい。いまの改新政権を支えている最大勢力、大伴氏の当主がわれらのまえへでてきて、なんといったか」
玄理もそれは気になってはいた。土地と民をすべて国家にとりあげられてしまうと、大氏族はいったい、どうなるのかという不安を長徳(ながとこ)はぶつけてきたのだった。
そうした動揺のなかを、玄理らの命を狙う暗殺者は泳ぎまわっているのである。