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【青雲の大和】(195)この日のために (2/2ページ)

2008.4.24 16:47
このニュースのトピックス青雲の大和

「これはいかん」

 不快なものを吐きだすようにいった。

「こういうものを詔のりの第一条にいれるのは、はっきりいって反対だな」

「まあ、玄理(げんり)の考え方からすれば、そうだろう。しかし……」

 日文は木簡の一行を指でしめしながら、

「いまの情勢をかんがみるならば、これは要る」

 と、自信をこめていった。

 玄理はそこをもう一度読んだ。やはり納得できなかった。

「この故重其禄、所以為民也というところは、どうみても問題がある。大夫(たいふ)つまり重臣がよく治めれば、民は利益をえる、だから重臣の俸禄(ほうろく)を手厚くするのは、民のためであるというのだろう。こんな言い訳じみた説明が詔勅に必要なのか」

 そういって、灯火に照らされた机を平手でばんばんと叩いた。

「おぬしのいうところはわかっている。しかし、この大改革をまえに皆、動揺していることもみとめなければなるまい。いまの改新政権を支えている最大勢力、大伴氏の当主がわれらのまえへでてきて、なんといったか」

 玄理もそれは気になってはいた。土地と民をすべて国家にとりあげられてしまうと、大氏族はいったい、どうなるのかという不安を長徳(ながとこ)はぶつけてきたのだった。

 そうした動揺のなかを、玄理らの命を狙う暗殺者は泳ぎまわっているのである。

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