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【青雲の大和】(195)この日のために (1/2ページ)
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その日の夜、玄理(くろまろ)が日文(にちもん)と顔をつきあわせるようにして、大化改新の文案づくりをはじめていると、僧坊に似た部屋の板壁のむこうで、ひとの気配がした。
「だれか、いる」
玄理は部屋の隅におかれた手燭(てしょく)をもち、縁側にでて隣の控えの間(ま)の引き戸をいっきにあけた。
なかは暗がりである。すかしみるように灯(ひ)をかざすと、帯刀した三人の男の顔がうかびあがった。
「ここでなにをしておる」
玄理が問うと、一人がさっと座りなおして床に両手をつけ、
「もうしおくれました。われら三人、内臣(ないしん)に宿直(とのい)をもうしつけられ、ここにひかえているものでございます」
といった。いずれも装束からみて、宮廷の武官である。
国博士(くにはかせ)の命を狙う倭馬飼(やまとのうまかい)なる者が、今夜にもここ大伴(おおとも)邸に忍びこむ恐れがあるとみて、鎌足(かまたり)が手配して張りこませたらしい。
「ご苦労である。朝までか、勤めは」
「さようでございます。先生がたのお仕事にさしさわりますゆえ、動くなと命じられておりますが、つい音をたててしまいました。おゆるしください」
三人のうち頭(かしら)らしい男が、そういって低頭するのを背にして部屋にもどると、日文が、
「さあ、それはもう捨ておいて、つぎにかかろうではないか」
と、漢語で書いた大化改新の詔(みこと)のり第一条の後半をみせた。日文にすれば、鎌足が水も漏らさぬ態勢でまもってくれているのであれば、われらは改新を推進する国博士としての職務に専念すべきだということのようである。
玄理は灯火を近づけ、木簡に書かれた日文らしいきっちりとした楷書(かいしょ)の字面(じづら)に眼をとおしたが、頭をあげると、