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【青雲の大和】(194)この日のために (2/2ページ)
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「はい、毎日が夢のようでございます」
「そうか、それでは気の毒だが、ここしばらくは皇子のもとを離れてもらわねばならない」
「離れて、なにをせよと」
「倭馬飼なる者と連絡をとり、その配下にはいり、国博士のお命を狙う企てを助けるのだ」
雄君は一瞬、ぼうぜんとしたが、すぐその意をさとると、たちまち顔を赤く染めた。
「その者はまだ、汝を疑ってはいまい」
「はい、それはまちがいなく。吉野の宮が陥(お)ちるまえに、わたしは倭馬飼を追って落ちのびたことにしておりますので」
「そう思いこんでいるのなら、それに乗ずることだ、いいか。そうしてつねに行動をともにして、その者の言動をさぐれ」
若い雄君にかんでふくめるように命じている鎌足の顔が、あまりにも穏やかなのをみて、玄理はあっけにとられる思いだった。
この国の絶対的な権力をにぎっていた蘇我(そが)を謀略で倒した鎌足にとっては、この程度のことはたぶん、子供だましにひとしいのである。
「大海人の皇子には、あすまでにお伝えしておくから、すぐにこちらの仕事にかかるように」
鎌足は雄君に命じると、玄理、日文(にちもん)の二人にむきなおり、
「このようなしだいでありますれば、両先生にはいっさいお気にされることなく、改新の大綱をつくっていただきますように」
といって、頭をさげた。