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【週末読む、観る】(5) (4/5ページ)

2008.4.20 08:26
このニュースのトピックス週末読む・観る

 碧は鷹野のおじちゃまの子供を産む。鷹野のおじちゃまは妻に手紙を残して家を出て、碧と暮らす。これまでの常識では、大悲劇となるところ、周辺の人も家族も、これと非難するような雰囲気はない。自然の成り行きの感じで、納得している。

 登場する女性たちは、自分の感性に忠実に生きている。感性は自然だから、他人の夫を奪い恋人を奪っても、いわゆるいやらしさがない。波は剛志とこの小説の最後に結婚する。しかし、結婚・夫という枠にはめられない生き方の物語が、これから始まるという予感がみそ。

 軽いタッチに見えて、巧な描写、構成力、人物の環境設定など、作者の並々ならぬ力作である。

    ◇

 あがわ・さわこ 昭和28年生まれ。慶大卒。著書に『ウメ子』『恋する音楽小説』など。

【この本と出会った】

■『銀河鉄道の夜』宮沢賢治著(新潮文庫など)

小説家 間宮緑

《非合理的な「ことば」の世界》

 僕は「言葉の力」というものをあまり信じていない。十代のころ、訳の分からない病気のために、ろくに学校へも行かず、ひたすら本ばかり読んでいた。会話は無力だと思った。病気を説明するものは血圧の数値しかない。僕を説明するものは試験の点数か偏差値しかない。何千行の言葉より、数桁(すうけた)の数値が物を言う。簡単だし、合理的だ。

 宮沢賢治は非合理的な《ことば》を生涯考え続けた作家だ。その作家の書いた『銀河鉄道の夜』は、僕を、混沌(こんとん)とした《ことば》の世界に呑み込んだ。少年ジョバンニは、憧(あこが)れ、愛する友達カムパネルラに幾度となく話しかける。カムパネルラはまともに答えない。答えたとしてもそっけない。そしてどこか、ずれている。そもそもカムパネルラは、からかわれるジョバンニを「気の毒そうに、だまって少しわらって」見ているような少年だ。乗客たちはほとんど話が噛(か)み合わない。好き勝手に話をする。言葉は空(むな)しくすれ違う。ジョバンニは心を痛める。彼は伝えたいことを伝えることができない。彼もまた「だまって少しわらって」いる少年の一人だ。

 「ほんとうの神さま」「ほんとうのさいわい」。ほんとう、とはいったい何か。2人の見ている光景が違う、ということを知った途端ジョバンニはカムパネルラの姿を見失う。

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