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【週末読む、観る】(4) (3/5ページ)
グローバル化した世界がひとつの価値観で覆われようとしている現在、それに逆行するかのように頻発する民族紛争や文化摩擦を超えて共生関係を築くためには、移動による世界観を持つ人々が他者集団との共生戦略として発動させてきた文化をめぐる思索が大きなヒントを与えてくれるだろう。
にしお・てつお 昭和33年生まれ。国立民族学博物館教授・民族文化研究部長。著書に『アラビアンナイト』など。
【児童書】
■『赤い酋長の身代金』オー・ヘンリー著、訳・千葉茂樹、絵・和田誠(理論社・1260円)
評・前田真人(ライター)
《突き放して眺める視線》
20世紀初頭、アメリカで活躍したオー・ヘンリーは、しばしば「感動的な短編の名手」とされる。病床の若い画家を元気づけるために酔どれの老画家が命を落とす「最後の一葉」や、貧しい夫婦がそれぞれ自慢の品を手放し相手に尽くす「賢者の贈り物」など、有名作に描かれる自己犠牲の精神は、確かに、彼を善導精神に満ちた書き手と捉(とら)えさせるに違いない。
だが、刑務所暮らしも経験したオー・ヘンリーの魅力は、そうした「いかにもイイ話」にだけあるのではない。『オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション』の最終巻として刊行された本書は、それをよく示す。誘拐犯が身代金目的で攫(さら)った子供に手を焼き「引き取り料」を払って親元に返す表題作や、厳しい冬を刑務所でしのぐための犯罪に軒並み失敗した戸外生活者が、改心したとたん無実の罪で捕まる「警官と賛美歌」に描かれるのは、小狡(ずる)いけれど悪人になりきれず、しかしむろん無辜(むこ)でなどない生活者たちの姿や心情。そこでは「被害者」や「治安を維持する」はずの側が、はるかに冷淡かつ犯罪的に描かれている。だがむろんそうした単純化もまた誤謬(ごびゅう)で、オー・ヘンリーの「名手」たるゆえんは、立場の異なる両者を等しく突き放して眺める視線にこそある。