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【週末読む、観る】(3) (3/5ページ)
かつて1980円と19ドル99セントの違いに興味をもたれた方に、ぜひともお読みいただきたい本である。
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いいだ・あさこ 中央大商学部准教授。昭和44年生まれ。東京大博士課程修了。『数え方の辞典』など。
■『廃墟の上でダンス』ミラーナ・テルローヴァ著、橘明美訳(ポプラ社・1575円)
評・和爾桃子(翻訳家)
《チェチェンの「地獄の始まり」》
ミラーナは14歳の女の子。大人っぽいおしゃれや男の子の視線がそろそろ気になるお年頃だ。「その日」は大きなダンスパーティーが開かれるはずだった。ドレスの話で仲良しの子たちと朝から盛り上がり、うきうきと家路をたどる。でもパーティーはなかった。戦争が始まったから。一家にとっても国にとっても、「その日」は地獄の始まりだった。ロシア連邦西南の果て、中央アジアの小国チェチェンでの実話だ。
14年後もこの地獄は終わらない。チェチェンの人々だけでなく、上層部から非道行為を強いられるロシア軍の農村出身の若者たちも同じ地獄にいる。殺す側も殺される側も、強大な権力から一緒くたに無用のレッテルを張られ、この世から消し去られようとしている。同じ人間にそんな判断を下す権利が、いったい誰にあるというのか。
地獄を止められるとすれば豊かな西側諸国だが、国の知名度がないために関心をひかず、悲惨な実態は全く報道されない。おおかたはイスラム過激派掃討という対外的な大義名分をうのみにしている。本書はその根拠薄弱ぶりをあっさり論破し、揺れるロシアの一面を女性ジャーナリスト暗殺事件などで示している。
現今の複雑怪奇な国際情勢を読むには、普段から質のよい情報源(ソース)に接するよう心がけることが大事と思う。なるべく若いうちにそうした習慣を身につければ、見る目が自然に培われるからだ。チェチェンもチベットも断片情報ならインターネットでいくらでも入手できるが、個々の事実に嘘はなくても全体の認識バランスが崩れれば、真相は限りなく遠のく。