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【週末読む、観る】「仕事に役立つインテリジェンス」ほか (1/5ページ)
『仕事に役立つインテリジェンス』北岡元著(PHP新書・756円)落合浩太郎(東京工科大学准教授)
《人間の本質への理解深める》
著者は外務省国際情報課長、内閣の衛星情報センター総務課長を歴任し、現在は政策研究大学院大学でインテリジェンスの研究と講義を行っている。日本でインテリジェンスの実務と理論の両方を知る唯一の人物であろう。過去の2作『インテリジェンス入門』『インテリジェンスの歴史』はやや教科書的で硬かったが、本書は質を落とさずに一般の読者に分かりやすいように工夫した「新書の鑑」となっている。
インテリジェンスには知性という意味もあるが、まさに人間の思考、さらに本質への理解を深めることができる一冊だ。仕事に限らず、情報分析や判断は人生に不可欠であり、その後を大きく左右することもある。ヒューリスティクス(判断や評価にいたる思考の近道)、イギリスのトマス・ベイズが考え出した「ベイズの定理」、競合仮説分析、リンチピン分析などの例を使って、平易に説明されているため幅広い人に役立つ。ギャンブラーの誤信、「こういう人がいる症候群」「一見が百聞に如かないこともある」「後知恵のヒューリスティクス」などに思い当たり、反省する人も多いだろう。
また、人間には都合の良い仮説を重視し、無意識のバイアス(偏見)があるというが、イラクに大量破壊兵器があるから攻撃すべきだと考えたブッシュ米政権にも、また、攻められても1991年の湾岸戦争と同じく体制を維持できると信じたフセインにもあてはまる。
CIA(米中央情報局)のヘイデン長官は、この30年で唯一の適任者だろう。分析官ではないが、インテリジェンスのプロの軍人で、昨年と今年の米フットボールのスーパーボウルの勝敗のみならず、点差までほぼ正確に予想したと評判だ。読者の心がけ次第で、本書を何度も熟読して自分の思考や判断の方法を省みて、著者の進める改善策を習得することにより、北岡氏やヘイデン長官に一歩でも近づける可能性をもつ。
きたおか・はじめ 昭和31年、東京都生まれ。東京大卒。外務省を経て政策研究大学院大教授。