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【週末読む、観る】著者に聞きたい−高木敏光さん ほか (3/4ページ)
『古本茶話』矢島康吉著(文学の森・2100円)評・岡崎武志(書評家)
《「過去からのドラマ」漁る日々》
私は大の古本好きだから、同好の士が書いた本に目がない。桜咲く春に、これまた、うれしい一冊が手元に届いた。舌なめずりするように一気に読んだ。
著者は昭和13年、東京都中野区生まれ。都内某銀行ほか職を転々としたのち、いまは悠々自適の生活を送っていらっしゃる。句作と箏、それに古本屋巡りをもっぱらの趣味とする。「十四、五歳の新制中学の頃から」というから、ずいぶん年季の入った古本漁(あさ)りの日々をつづった文章が一冊にまとまった。
古本好きは、だいたい決まった蒐集(しゅうしゅう)対象を持つものだが、矢島さんの場合は、旧満州物、ロシア物、戦記物、底辺下層生活本、東京本等々、そこにマンガが加わる。このお年でマンガに手を出す方は珍しい。
そのせいか、文章に佶屈(きっくつ)や苦渋は少なく、全体に明るく若々しい。暴力団総長を主人公にした、新田たつおの人気マンガ『静かなるドン』を、ショーロホフの同名小説のマンガ化だと勘違いして買った、という微笑ましい話もある。
長短さまざまな文章を収録し、どれも楽しいが、わざわざ東京・神田駿河台の山の上ホテルに宿を取り、世界一の本の街「神保町」をゆったり古本漁りをする冒頭の長文「ぼくの神田神保町」がまず目を引く。これはささやかだが、古本好きにとって至福の夢だ。
短い方では「百円の楽しみ」が、たった2ページながら、きりりと引き締まった逸品。新古書店で100円の本を買う面白さが語られているのだが、そこで「自費出版の本」を探すのだそうだ。エッセー集、自分史、回想記、句集や歌集が、誰にも読まれず100円の浜辺に流れ着く。『定年』というエッセー集に感動し、激励の電話を入れると奥さんが出てきてこう告げた。
「ありがとうござます、主人は去年なくなりました」
古本は、単に古くなった本ではない。過去からドラマを運ぶ舟なのだ。
やじま・やすよし 早大ロシア文学会会員。著書に『僕の内田百?閨x、句集『紅枝垂』。