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【週末読む、観る】著者に聞きたい−高木敏光さん ほか (2/4ページ)
『花の巡礼』高橋順子著(小学館・1680円)評・新延拳(詩人)
《詩歌との幸せな出合い導く》
「美しい『花』がある。『花』の美しさといふ様なものはない」と書いたのは小林秀雄であるが、確かにそれぞれの花を言葉で表すことは存外難しい。しかしながら、花はそっと私たちの心に寄り添ってくれる。それは詩歌と同じではないか。詩とは何かということを説明するのは究極のところ困難である。けれども、われわれは詩を詩として認識することができ、かつ詩は人の喜びや悲しみにいつも伴走してくれる。われわれが、何かの折に花を求めるのと同じであろう。つまり、花と詩歌は等価なのだ。
本書で扱っている花々はどれも特殊なものではない。水仙、菫、梅、桜、桃、椿、躑躅(つつじ)、薔薇、紫陽花(あじさい)、菖蒲、百合、牡丹、梔子(くちなし)、向日葵(ひまわり)、百日紅(さるすべり)、蓮、朝顔、芙蓉、秋桜、花芒、山茶花など、誰にでもなじみのある花々である。けれども、著者の料理の仕方によって、あるいはそれぞれすてきな詩歌との出合いによって、どれもとても愛しいものに思えてくる。まさにこの本は、花と詩歌の幸福な出合いの場なのだ。また、花々を通じて読者と詩歌の幸せな出合いがもたらせられる夢の空間でもある。
なお、本書には数多くの花の写真が添えられているが、それらはみなモノクロである。写真家、池田邦彦氏の腕前もさることながら、色を消すことによってかえって、花々の存在感が増しているのがおもしろいところだ。
登場する詩歌人も多岐にわたる。暮鳥、朔太郎、宮沢賢治から、田村隆一、永瀬清子、新川和江までの近代から現代に至る男女に偏らない詩人たち。万葉歌人から、鉄幹・晶子まで。俳人では、山崎宗鑑から、芭蕉・蕪村を経て、三橋鷹女、飯田龍太まで。それぞれ主題にあわせ、ジャンルを問わず逍遥できる著者、高橋順子のコレクションの広さには驚くばかりだ。
花が散っても、その面影がたつように、一巻を閉じた後も、花々と詩歌の余韻に、読者はしばし酔うことができるであろう。
たかはし・じゅんこ 詩人。昭和19年生まれ。東京大仏文科卒。『花まいらせず』で現代詩女流賞。