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【週末読む、観る】森洋子さんインタビュー&大森望さんの読書日記etc (1/5ページ)
著者に聞きたい 森洋子さん 『ブリューゲル探訪』(未来社・5040円)
16世紀フランドルに生きたピーテル・ブリューゲルは、日本人が最も親しみをおぼえる画家のひとりだろう。麦畑で働く農民や、祝祭を楽しむ民衆の姿は、時代や民族、宗教を超えて共感を呼ぶ。
その魅力の“伝道師”として40年以上、ブリューゲル研究に携わってきた。このほど、ブリューゲルの世界を易しく繙(ひもと)き、初のエッセー集にまとめた。研究者としての半生、人との出会い、社会への提言も盛り込まれている。
「人生で経験を重ねるごとに、ブリューゲルへの理解が深まった」という。大学の卒業論文を機にブリューゲルに魅せられ、ドイツ、米国、ベルギーに留学。その間、大学で教鞭(べん)をとるとともに、結婚と子育て、夫の病死など、人生の紆余(うよ)曲折を乗り越えてきた。「辛い体験が、次の研究へのエネルギーを与えてくれました」
絵画を糸口に、研究は当時の民衆文化や人間観、道徳観など広範囲に及ぶ。「画家の足跡を旅したり、玩具に使われた豚の膀胱(ぼうこう)や羊の骨を集めたり、楽しみもある。100歳生きても研究は終わらない」と笑う。師や仲間との出会い、交流から得た恩恵も計り知れない。「人を訪ね、ものを直に調べる大切さを若い世代に訴えたい。インターネットは消極的なツール。結局は向こうから送信されるものしか得られませんから」
さて、ブリューゲルは現代人に何を語りかけるのか。
子供たちが91種もの遊びを展開している「子供の遊戯」。「既製の玩具なしにこれだけ遊べるなんて子供は想像・創造の天才。この絵の複製を全国の幼稚園に張ってはどうか」と提案する。さらに、尊大な人間を戒める「バベルの塔」。昨年日本公開の映画「バベル」のパンフレットにこう書いている。「〈バベルの塔〉は現在、世界のいたるところで見られる『紛争の塔』への警告のようだ」。今私たちがブリューゲルから学ぶことは多い。(黒沢綾子)
■もり・ようこ 明治大名誉教授。新潟県生まれ。著書に『ブリューゲル全作品』など。