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【週末読む、観る】ひど過ぎる「光市母子殺人」弁護団−花田紀凱の週刊誌ウオッチング&文珍の書評etc (2/4ページ)
書評倶楽部 落語家・桂文珍
『仏果を得ず』三浦しをん著(双葉社・1575円)
落語と歌舞伎、文楽というのは、昔から互いに影響を与えていて今日まで伝統芸能として続いてきたし、今後もそれは持続されなければならない。NHKの朝ドラで上方落語の世界に入った女性落語家が主人公の「ちりとてちん」が放送されるというようなことは、上方落語の世界にはなかったことだ。ありがたいことと感謝している。
どのような職業であれ、そこで努力しているのは個々の人間なのだと改めて思う。そこで今回の『仏果を得ず』は伝統芸能、それも文楽の若手技芸員、大夫の話である。
文楽は物語を語る大夫、三味線、人形遣いたちが一体となって表現する、日本が世界に誇れる、世界遺産として認定された素晴らしい芸だと思う。大阪には国立文楽劇場があり、公演の度に客席で楽しませていただいている。東京でも国立劇場で公演が行われ、チケットが手に入りにくいほどの人気だ。
人の情を、あれほどきめ細やかに語れる世界は他にはないと思う。その技芸員もそれぞれが人間で、小説になるほど面白いこともあるであろう。そこを著者は見逃さなかった。古い時代を語っていても、それを語る大夫は今という時代を生きる人々で、主人公は若手の技芸員ゆえに、生活は大変で、大阪の生玉寺町の裏通りのラブホテル「ラブリー・パペット」に住んでいる。立ち並ぶ寺のはざまに、ラブホテルがぽつぽつとある生玉寺町の光景は何度見てもシュールだ。「生きているからこそ、死ぬことができるんや。寺もラブホも、死を扱うのに変わりないやろ。担当するんがおっきな死かちっちゃな死かのちがいだけや」の段には笑わせてもらった。
文楽は、堅苦しく難しいと思っていらっしゃる皆様、こんな楽しい人間模様もありだと、芸に懸命に生きる若者を描いたオススメ作品です。
■かつら・ぶんちん 昭和44年、5代目桂文枝に入門。古典、新作の両方をこなし、テレビキャスターも務めた。