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【青雲の大和】(147)樹下の誓い (1/2ページ)
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「なにをしているか、追え」
鎌足(かまたり)は皇居を出て行く古人大兄(ふるひとのおおえ)と従者をぼんやりとみおくっている子麻呂(こまろ)にきびしく命じた。
「衛兵をひきい、皇子(みこ)を吉野(よしの)までお送りせよ」
鎌足が任じられた内臣(ないしん)という地位は、いわば革命政権の要(かなめ)の位置にあって、現時点ではほぼすべての権力をにぎっている。皇居警備の最高責任者であった高向国押(たかむこのくにおし)が、蘇我(そが)をみかぎって姿を消したいま、宮廷警備隊のほか衛兵は皆、鎌足の指揮下にあるといっていい。
その兵を子麻呂にひきいさせ、古人大兄を吉野に送りとどけようというのである。
鎌足が子麻呂に厳命しているのをきいて、玄理(くろまろ)はその意図がわかった。
古人大兄を警護して送っていくというのは、あくまで表むきのことにすぎない。真のねらいは、いまなおどこにひそんでいるかしれない蘇我の残存勢力に、古人大兄をうばわれないための護送である。
あるいは古人大兄が変心して、東国へ逃れるといった事態が起こると、まだ地方をおさえきっていない中大兄(なかのおおえ)の政権には大ごとである。鎌足のねらいは、古人大兄の身をまもりつつ治安維持にのりだすということでもあった。
命(めい)をうけた子麻呂が護送の部隊編制のため駆けだしていくと、鎌足はもとのおだやかな顔にもどって、師である日文(にちもん)と玄理に対した。
「まあ、つぎつぎと予期せざることが起きるものでございますな。さあさ、こちらへ」
そういって二人を東宮の一画にある別棟の部屋へ案内していく。