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【青雲の大和】(144)樹下の誓い (1/2ページ)
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その日昼、皇居正殿において、国家の最高顧問である国博士(くにはかせ)の公職を正式に拝命した玄理(くろまろ)は、正殿わきの控えの間(ま)で異様な光景を眼にした。
むせるような真夏の暑気がこもるなかで、じっと頭を垂れてうずくまっている者がいる。髪を切り、ひげを剃(そ)り、袈裟(けさ)をつけた僧服姿である。
うしろに従者がついているが、これも主人にあわせて陰鬱(いんうつ)に面(おもて)を伏せている。
−−何者だろう。
正殿からいっしょにでてきた日文(にちもん)に、玄理は目顔できいた。
日文は柱のかげで、
「わからぬか、古人大兄(ふるひとのおおえ)だ」
と、小声でいった。うしろにいるのは側近の吉備笠(きびのかさ)であるらしい。
玄理はその姿をあらためてみつめた。
いつか宮廷の回廊をさっそうと歩みゆく古人大兄をみたことがあるが、いまはすっかり面がわりしている。頬はやつれ、眼のふちは黒ずんで病人のようである。僧形(そうぎょう)であぐらを組み、床の一点を凝視しているようすは、どうみてもまともではない。
かつて入鹿(いるか)が山背大兄(やましろのおおえ)と太子一族を蘇我(そが)兵に襲わせたとき、古人大兄は入鹿に迎合して露骨に皇位をねらっていた。そのごも蘇我勢とともに動いてきたが、この事変の直前に鎌足(かまたり)が強引に蘇我からひきはがすようにして、味方にひきこんだときいている。
くわしい経緯は玄理にはわからないが、古人大兄がとつぜん、この異形(いぎょう)で皇居にあらわれたのは、蘇我が打倒されたあとの蘇我系皇子の微妙な立場に関係しているのは確かだった。
衛兵からの連絡があったのだろう、鎌足が急ぎ足でやってくると、
「どうされたのか、その姿は」