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【青雲の大和】(124)決行 (1/2ページ)
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古人大兄(ふるひとのおおえ)は入鹿(いるか)が山背大兄(やましろのおおえ)と聖徳太子ご一族を斑鳩(いかるが)の宮に襲ったとき、つぎに皇位につけることを公言していた皇子(みこ)である。
いまは鎌足(かまたり)の説得により、蘇我(そが)を打倒する側についているが、蘇我勢のだれひとりとして、そのことを知っている者はいないはずである。
「ぶれいである、馬を降りよ」
雨中を追ってきた蘇我の者どもに対して、子麻呂(こまろ)がもう一度、怒鳴りつけると、四人がばらばらと馬を降り、片ひざを地につけて古人大兄を仰ぎみる姿勢をとった。
しかし、皇子に心服しての態度でないことは、その者どもの面がまえをみてもわかった。皆、不遜(ふそん)に眼をぎらつかせている。
「もうしあげまする」
うち一人が手をついていった。
「われらは蘇我の大臣(おおおみ)の命により、板蓋(いたぶき)の宮正殿における一大変事の犯人を捜しだし、これを討たねばなりませぬ。そちらにみえるのが古人の宮でありますれば、正殿で犯行に及んだ者どもをご承知のはず。その名を明かしていただきたい」
言上をきいて、子麻呂は馬上でひるんだ。入鹿誅殺(ちゅうさつ)の報は早くも大臣、蘇我蝦夷(えみし)のもとに達している。蘇我勢あげての犯人捜しがはじまっているのである。
もしここで、古人大兄が真相を明かしてしまうならば、蘇我はただちに兵を動かし、中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)と鎌足を捕らえ、これを斬殺するであろう。子麻呂と網田(あみた)については、いうまでもない。
中大兄と鎌足にとっては、決起した直後のいまという時点が、もっとも無防備でひよわなときなのである。