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【青雲の大和】(123)決行 (1/2ページ)
このニュースのトピックス:青雲の大和
「よし、おれは東門に馬をまわしておく」
古人大兄(ふるひとのおおえ)のもとへもどりながら、網田(あみた)がいった。
「皇子(みこ)を東門におつれしてくれ。西門は危ない」
西門から甘樫丘(あまかしのおか)の蘇我(そが)邸にかけて、蘇我兵がびっしりと列をなして警戒にあたっているのは、子麻呂(こまろ)も知っている。
皇居での入鹿(いるか)斬殺の報が蘇我邸にとどくまでに、飛鳥の京域を駆けぬけ、古人大兄を自邸に送りとどけねばならない。
「皇子、馬の用意ができております。わたしどもがお送りいたしますれば、ご安心くださいますように」
子麻呂がいうと、せかせかと歩きまわっていた古人大兄は動きをとめ、子麻呂の顔をじっとみた。
古人大兄にすれば、子麻呂はたったいま、眼のまえで入鹿を斬殺した男である。入鹿の血で濡れた剣は、そのまま子麻呂の腰におさまっている。
「われをどこへ連れて行く気だ」
青ざめた顔で訊(き)いた。
「ですから、大市(おおち)の宮へお送りするともうしあげているのです」
古人大兄の自邸は飛鳥の北の箸墓(はしはか)に近い大市にある。蘇我打倒の戦いに勝利するまで、自邸にこもっていてもらいたい、というのが鎌足(かまたり)の意向であれば、子麻呂らの挙動に多少は怯(おび)えていただくほうが好都合なのである。
子麻呂は古人大兄のうしろにぴったりとつき、皇居板蓋(いたぶき)の宮の東門へ誘導していった。
外はなお激しく雨滴が地面を叩いている。その門外で、網田が三頭の馬を用意して待っていた。
「お乗りください」