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【青雲の大和】(120)決行 (1/2ページ)

2008.3.1 08:11
このニュースのトピックス青雲の大和

 皇子(みこ)を護らねばならぬ。

 その一心だった。

 白刃をきらめかせて、子麻呂(こまろ)は回廊を走った。うしろに網田(あみた)がついてきている。

 舎人(とねり)の一人が驚いて立ちつくしている姿が、ちらっと子麻呂の眼をかすめて去った。

 正殿にとびこむと、中大兄(なかのおおえ)の燃えるようにあざやかな緋色(ひいろ)の衣服が、ひとすじの火箭(ひや)となって正面へ突進していくのがみえた。

 子麻呂はもうなにも考えなかった。夢中で皇子を追った。網田が床をふみならしてあとからせまってくる。

 蘇我入鹿(そがのいるか)は大君(皇極天皇)の左に侍すかたちで立っていた。右が古人大兄(ふるひとのおおえ)、玉座にむかって三韓進調(しんちょう)の表文を手に直立しているのが山田(やまだ)の臣(おみ)である。

 入鹿は瞬時、なにが起きているのか、わからないようだった。自分にむかって抜刀して突進してくるのが中大兄であると知って、はじめて腰をひき、わななきながら手をかざした。

 その入鹿に中大兄の若い体躯(たいく)がぶつかっていく。

 最初の一撃は紫冠(しかん)をつけた入鹿の頭部だった。二撃目は肩、そして三撃目でようやく子麻呂が追いつき、入鹿の腿(もも)を斬った。

 入鹿は大君のまえへ倒れこむと、

「われになんの罪があるというのか」

 声をふりしぼってさけび、

「ぜひに、お審(しら)べくだされ」

 といったまま、床に突っ伏してしまった。

 大君は驚愕(きょうがく)の眼をみはって、立ちあがっておられる。

「なにごとですか、これは」

 やがて中大兄に、叱責(しっせき)の声をあびせられた。

 中大兄はさっと床にひざをついた。子麻呂、網田がそれに倣(なら)った。

 中大兄がかん高い声で奏上をはじめたのは、決起の理由である。

「蘇我の鞍作(くらつくり)、わが皇統を傾けこれを亡ぼし、みずからが皇帝たらんとしております。いま、鞍作を討たざれば、大和は永遠に蘇我の属領となり果てますが、これをゆるしておけましょうか」

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