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【青雲の大和】(118)決行 (2/2ページ)
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なにをやっているのか、子麻呂にはわからなかった。ふだんから入鹿がこの俳優をひいきにして、宴席などにつれてきては皆を笑わせているのは知っているが、まさか皇居正殿での式典にこのような者を使おうとは思えない。
と、入鹿のまえで男は突如でんぐり返りをやり、がばっと身を伏せたうえ、両の手をそろり、そろりと頭上にあげはじめた。
鎌足は入鹿のそばに寄り、なにかを助言するように耳打ちしている。
入鹿は笑いを浮かべたまま、腰に佩(は)いた黄金の大刀をとり、俳優がさしあげている両の手に乗せた。
おありがとうございます、といった格好で男は平身低頭をくりかえしている。
そのときになってやっと、子麻呂はその重大な意味をさとった。鎌足は入鹿がただひとり気をゆるしている俳優にいいふくめて、黄金の大刀をとりあげてしまったのである。
子麻呂には、どうにも信じられない光景であった。入鹿の心の動きのすべてを知りつくしている鎌足は、いったん信じたらどこまでも疑うことを知らない入鹿の意外な弱点に手を突っこみ、彼の命をまもることになるはずの最後の防壁をとりはらったのだった。
入鹿は顔を権力者の威厳をもたせた表情にもどし、ゆうぜんと正殿にはいっていく。
鎌足はわきに立ち、入鹿にむかって深々と頭をさげた。