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【青雲の大和】(117)決行 (1/2ページ)

2008.2.29 17:31
このニュースのトピックス青雲の大和

 高向国押(たかむこのくにおし)は蘇我(そが)勢にありながら、任務に忠実な高潔な人物として知られている。

 斑鳩(いかるが)の宮で蘇我兵の襲撃をうけた山背大兄(やましろのおおえ)が生駒(いこま)山中に逃れたとき、入鹿(いるか)が国押に追討を命じたが、

 −−わたしの職務は皇居を守ることである。

 としてはねつけた話は、末端の部下である子麻呂(こまろ)らをよろこばせた。

 しかし、根がまじめなだけに融通のきかないところがある。勝麻呂(かつまろ)が懸命になってなだめようとしているのも、そのためだった。

「大君がまもなく出御されるというのに、剣を隠しもって、このようなところにたむろするとは、なにごとであるか」

 厳しくとがめだてようとするのを、

「いや、いや、これにはわけがあって、いましばらくのご容赦を」

 と、勝麻呂は抑えるのに必死である。

「わけがある? どんなわけだ、もうしてみよ」

 瞬間、子麻呂のそばで網田(あみた)が剣をつかみ、腰を浮かしかけた。

「やもえん、ここへひきいれて斬る」

 小声でいった。

「待て、はやまるな」

 子麻呂はひきとめた。

 外では声を押し殺した勝麻呂の釈明がつづいている。

「ことの性格上、表ざたにできませぬが、わたしどもは無視できかねる不穏な情報をつかんでおります」

「なに、不穏な情報だと?」

「さよう、きょうの三韓進調(しんちょう)の儀を機会に、韓者(からもの)が入鹿どのを襲うというのです」

「なにをばかな。なぜ、韓者が入鹿どのをねらう」

「いや、これは前(さき)の三韓勅使、津守(つもり)どのがさる筋からつかんでこられたものでありまして、新羅(しらぎ)の後押しをされている入鹿どのを倒すため、百済(くだら)の刺客が式場にもぐりこむ恐れがあるというのです。この話は鎌足どのを通して、すでに蘇我の臣(おみ)の耳にはいっておりますれば、われらはとくに命じられ……」

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