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【青雲の大和】(113)決行 (1/2ページ)
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中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)が発せられた命(めい)をうけて、かたわらに侍す鎌足(かまたり)が入鹿(いるか)襲撃の手はずを話しはじめた。
「蘇我(そが)の臣(おみ)が甘樫丘(あまかしのおか)の自邸をでて正殿に到着すると、まもなく大君が出御され、三韓進調(しんちよう)の儀がはじまる」
ことの重大さに比して、鎌足の話しぶりはつねと変わらず、冷酷とも思えるほど淡々としている。同門の学友である入鹿を倒すことに心の葛藤がないはずはなかったが、それを抑えきっての決断であろうと思われる。
しかし、子麻呂(こまろ)が鎌足の指示をうけとめ聴きわけていたのは、ここまでだった。つぎに鎌足が、
「入鹿を討つのは儀式がはじまったあと、大君の御前においてである」
といったとき、子麻呂の膝(ひざ)はなにかに憑(つ)かれたように、がくがくとふるえだしていた。
畏(おそ)れ多くも天皇が出御されたそのまえで、血の殺戮(さつりく)を演じなければならない。
「決行の合図は、蘇我倉山田(そがのくらやまだ)の臣(おみ)が三韓進調の表文を大君のまえで読みはじめたときとする」
鎌足の指示は、あくまで冷静である。
「表文誦読(しようどく)がはじまれば、二人はただちに御前へとびだし入鹿を討て。いっさいの逡巡(しゅんじゅん)、怯懦(きょうだ)はゆるされない。決起の成否は汝(いまし)らの決断にかかっていると思え」
そのとき、子麻呂のよこで同じように身をふるわせてきいていた網田(あみた)が、なんども唾(つば)を呑(の)みこむ動作をくりかえしながら問いかけた。
「御前で蘇我を討てとのことですが、われらには兵(つわもの)がございませぬ。どういたしますか」
兵、武器である。
「いま、取らせる」