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【青雲の大和】(112)決行 (1/2ページ)

2008.2.26 18:25
このニュースのトピックス青雲の大和

 冠位六位以上の官人が朝庭(ちょうてい)にそろい、三韓を代表する使者がそれぞれの国の礼装で位置についてまもなく、海犬養勝麻呂(あまのいぬかいのかつまろ)が子麻呂(こまろ)をよびにきた。

 式典がおこなわれるあいだ、子麻呂と網田(あみた)は正殿の警戒にあたれ、というのである。

 皇居警備の隊員としてはとうぜんの任務ではあるが、あらかじめ言い渡されていたことにはない、予定外の指示だった。

 −−やはり決起は延ばされたのだ。

 子麻呂はそう判断して、正殿にむかう上司の勝麻呂のあとについて行った。

 西門からは網田が厳しい顔つきで出てきて、黙って子麻呂のよこについた。

 正殿わきの回廊の角(すみ)に、舎人(とねり)の控えの間がもうけられている。正殿での御用にいつでも応じられるように、ふだんは数人の舎人が待機しているのだが、その部屋にはいるまえに、勝麻呂がふりかえっていった。

「朝餉(あさげ)はすましたか」

「まだです」

 網田が無愛想に答えた。

 二人とも、夜明けまえから勤務についていた。宮廷の門衛の仕事はつねにそうで、日の出とともに門をあける。出仕する官人らが全員門をくぐり、朝堂にはいったあとでかんたんな食事を詰め所でとる、というのがふだんの日課になっている。

 しかし、きょうのような式典のある日は、その余裕がないのは勝麻呂なら知っているはずである。

「では二人には、のちに飯(いい)をとらせる」

 勝麻呂は理由を話さず、それだけいって控えの間の引き戸をあけ、二人をさきに押しこむように入れた。

 なかにはいって、子麻呂は驚きの眼をみはった。そこに中臣鎌足(なかとみのかまたり)が端然と座していたからである。

「まもなく皇子(みこ)がみえる。しばらく待て」

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