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【青雲の大和】(108)最後の誠意 (1/2ページ)

2008.2.24 08:16
このニュースのトピックス青雲の大和

 −−わが門下で学業、蘇我(そが)の太郎に如(し)くはなし。

 と、そのように話された旻(みん)師のことばを鎌足(かまたり)は思い起こしていた。師の学堂で図抜けた学績をしめした入鹿(いるか)は、いま驕(おご)りたかぶって、蘇我革命をやろうと学友の鎌足にもちかけているのである。

「これも師の話だが、唐帝李世民(りせいみん)は、敵であれ味方であれ、あらゆる人材をまわりにあつめ、その知恵と力によっていまの唐の繁栄をきずいたということだ」

 鎌足がなにを考えて蘇我邸に乗りこんできたのかも知らず、入鹿は皇位を天皇家から簒奪(さんだつ)する構想を話しつづけた。

「ひるがえってわが蘇我勢をみるに、有能な人間が一人もいない。どれもこれもぬけさくばかりではないか。あのような者どもを使わざるをえないとしたら、われが帝位についてもなにもできはしない。この世でわれが信頼するのは、鎌足ただ一人。どうだ、宰相になって腕をふるってくれないか」

 いわせるだけ、いわせておいて鎌足はおもむろに口をひらいた。

「はっきりともうしあげよう。わたしは大和にあっては天皇(すめらみこと)を護(まも)りたてまつる立場にある。したがって、革命には反対である」

 入鹿は意外なことをきいたという顔で、鎌足をみた。

「天命革(あらた)まる、といえばきこえはいいが、現実はどうであるか。民が百万、二百万と死んでいく隋末期の惨状を、旻師はなんどもなんどもわれらに話してくださったではないか。師のお考えは、はっきりしている。天下を騒乱におとしいれる革命は、この大和ではあってはならないということだ」

「いや、それはちがう」

 入鹿はあわてぎみにいった。

「あれは隋の煬帝(ようだい)がひどかったからだ。われは帝位についても、あのような悪逆はやらない。というより、やる理由がない」

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