ニュース: 文化 RSS feed
【週末読む、観る】『「死」の教科書』悲しさに寄り添い気付く命 (1/2ページ)
このニュースのトピックス:週末読む・観る
『「死」の教科書』産経新聞大阪社会部著(扶桑社新書・819円)
「人は輪になって踊る。丘の上で死体を数え、微笑(ほほえ)みながら飲み交わす。撃ち殺された男の匂(にお)い、引き裂かれた女の匂い」。これは2005(平成17)年9月、母にタリウムをもって毒物実験をした16歳の少女の日記である。毒物を飲ます前には、「僕の中に居る彼女の存在を感じなくなりました。消えてしまったのでしょうか。とても寂しいです」と書いていた。僕と自称する少女は「寂しく」とも、「悲しさ」を知らない。
凶悪事件を起こした少年の手記は、ほとんど同じことを伝えている。それにもかかわらず事件後に必ず、教育委員会は「命の大切さ」を教えるという。14歳を過ぎた少年に「命の大切さ」を教えなければならない社会とは何か。教育委員会は、そんな社会の指導機関であること、どのような教育を行っているのかを反省しない。少年たちは「命の大切さ」を斉唱しながら、「自分の存在を感じなくなりました」と思い続けているのに。
本書は産経新聞大阪社会部の記者たちが、JR福知山線脱線事故の遺族取材をきっかけに「死を考える」と題して連載したものである。脱線事故から、少年犯罪、自殺、死刑、臨終、葬送、そしてイラク戦争へと課題を広げている。東京のマスコミであれば追えない課題に取り組めたのは、「大阪ジャーナリズム」だったからこそ、と記者たちは述べる。

