MSN Japanのニュースサイトへようこそ。ここはニュース記事全文ページです。

ニュース: 文化 皇室学術アートブックス囲碁将棋写真RSS feed

【青雲の大和】(88)契りの朝 (1/2ページ)

2008.2.14 19:22
このニュースのトピックス青雲の大和

 翌日、夏の日が沈み、皇居の宮門が閉ざされると、子麻呂(こまろ)は同僚や部下に知られないように、こっそりと持ち場をぬけだし、中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)の館(やかた)に忍んでいった。

 広間に独り海犬養勝麻呂(あまのいぬかいのかつまろ)の姿があり、剛直な顔にいらだちをみせて立っていた。

「遅いっ、網田(あみた)はどうした」

「もう、おっつけまいりましょう」

「そんな悠長なことで大事はなせぬぞ。きょうからわれが、きさまらを鍛える」

 のっけからまくしたててきた。宮廷警備隊の副将として、勝麻呂は子麻呂らのうえに立つ上司である。いつ反蘇我(そが)の闘将になったのか、たぶん鎌足(かまたり)がひきいれたのだろうが、子麻呂はこの男の変貌ぶりにわが眼をうたがう思いである。

「これをもて」

 勝麻呂は棒を荒削りした木刀を両手にさげてきて、一本を子麻呂に握らせた。

「これでわれに打ちかかってこい」

 そういったとき、網田が大きな体を縮めるようにして広間にはいってきた。

「遅いっ」

 勝麻呂はまた怒鳴りつけ、木刀の一本を網田にわたした。

「これは?」

「きさまらは、たった一本の剣で蘇我を倒さねばならぬ。われが相手をしてやる。容赦はいらん。われを敵とみて打ちかかってくるのだ」

 そういうと、勝麻呂はきのう中大兄がすわっていた一段高い主座に、おそれげもなく木刀をもって突っ立った。

 きのうと同じく、正面の三か所に灯火が燃えている。中大兄がいる本館と離れているせいか、物音ひとつしない静けさである。

「鎌足どのはきさまらの腕を買っておられるようだが、われからみればまだ、ひよこだ。網田、まずおまえからだ。そこから突進して打ちかかってこい」

 網田はまだよく呑(の)みこめていないのか、木刀をさげてぼんやりと立っている。

「ばかもん、なにをぼやぼやしている。走れ、体ごとぶっつけてくるのだ」

PR
PR

PR

イザ!SANSPO.COMZAKZAKFuji Sankei BusinessiSANKEI EXPRESS
Copyright 2008 The Sankei Shimbun & Sankei Digital
このページ上に表示されるニュースの見出しおよび記事内容、あるいはリンク先の記事内容は MSN およびマイクロソフトの見解を反映するものではありません。
掲載されている記事・写真などコンテンツの無断転載を禁じます。