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【青雲の大和】(81)死を賭して (1/2ページ)
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五月壬午(じんご)(十六日)の夜、津守(つもり)は飛鳥の高台にある中臣鎌足(なかとみのかまたり)の館(やかた)に忍んでいった。
予定された三韓進調(しんちょう)の日まで一か月しかない。急がねばならなかった。
「夜分わざわざ、恐れ入る」
あわただしく接遇の席をととのえて出てきた鎌足は、それでもゆったりとした構えはくずさず、ゆたかな風貌をなごませて年長者の津守をむかえいれた。
「蘇我(そが)の眼を警戒する必要はないとのことであったが、こうしてなんども会っているのをみられるのは、どうかと思いましてな」
津守がいうと、鎌足は、
「いや、蘇我にはすでに、津守どのに三韓との折衝にあたっていただいていることを知らせてあります」
と、平然としていった。
「知らせてある? 蘇我のだれに」
三韓の代表を皇居板蓋(いたぶき)の宮の朝庭(ちょうてい)にひっぱりだすのは、極秘の作戦だったはずである。
「蘇我入鹿(いるか)本人に」
津守は驚愕(きょうがく)して鎌足をみた。権力者、蘇我入鹿こそ、こちら側の情報がもれるのをもっとも警戒すべき相手ではないのか。
「入鹿はいっていましたよ。いい人選だ、津守どのに任せておけば、まずまちがいないだろうと」
やはり平然と、眼に笑みさえ浮かべて話す鎌足の顔を、津守はつくづくと眺めやった。
中臣鎌足とは、なにものであるか。年は津守より二十歳も若い。すでに遣高句麗(けんこうくり)大使などを歴任している津守とちがって、いまだ官に就いたことがない人間である。