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【青雲の大和】(74)盟邦の危機 (1/2ページ)
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「おう、玄理(げんり)、どうした」
玄理(くろまろ)が学堂にはいると、請安(しょうあん)が大きな顔をほころばせて声をかけてきた。
玄理のあとに、いま学堂をでたばかりの中大兄(なかのおおえ)と鎌足(かまたり)がつづいている。
「お二人につたえたいことがある。きみもいてくれ」
玄理がいうと、請安はそれと察して別室に三人を招じ入れた。
「急いでいただかねばなりません」
座につくと、玄理は中大兄の若い瞳をまっすぐみて、いきなりいった。勘の鋭い皇子には、これだけで意味が通じるはずである。
中大兄と鎌足がいまなにを策し、どう進めようとしているのか、玄理はいっさいきいていない。ただ、蘇我(そが)勢を分断するため、蘇我の分家である山田麻呂(やまだのまろ)に婚姻の話をもちこみ、娘を皇子の妃(みめ)に召し入れることに成功したと知らされただけである。
「なにか情勢が変わった、ということでしょうか」
鎌足が中大兄に代わってきいた。唐帰りの師にたいしては、鎌足はつねに敬意をこめた話し方をする。
「唐帝李世民(りせいみん)がまもなく高麗(こま)征討に乗りだしてきます。いや、もういまは攻めこんでいるかもしれない」
高句麗留学生からはいった情報を伝えつつ、玄理はそれがいかに重大な影響を大和にもたらすかを二人に説いた。
「日文(にちもん)も請安もそうですが、われわれは李世民がどれほど恐ろしい人物であるか知りつくしている。あの帝がみずから征討に乗りだしてきたとすれば、高麗の命運は尽きたも同然といわざるをえない。あと半島の南端まで唐の勢力がのびてくるのは、二年とかからないのではないか。それまでにこの国を、大和を、唐に伍していける国家につくりかえておかなければならないのです」