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【青雲の大和】(60)政略の夜 (2/2ページ)
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という若い皇子のはやる気持ちも、鎌足には察せられるところだった。
この日、偶然なのかどうか、南淵請安の学堂に旻師(みんし)と玄理師(げんりし)がきており、唐帰りの高名な三人が顔をそろえていた。
中大兄が高向玄理(たかむこのくろまろ)に会うのは、はじめてである。
「こちらが長安(ちょうあん)にその名がひびきわたっておりました玄理先生です」
請安がにこやかに紹介した。
「隋(ずい)打倒のため決起して非業にたおれた李密(りみつ)や、唐帝李世民(りせいみん)が三顧の礼で大将軍にむかえた徐世勣(じょせいせき)らは皆、このひとの同志であります」
冗談めかして話しているが、鎌足がきいたところでは、すべて事実らしいのである。
「ご指導のほど、よろしく」
中大兄は明るく笑みをうかべて、気さくに頭をさげた。
「ときに皇子(みこ)は、おいくつになられました」
玄理がきいている。
「年が明けると、二十歳(はたち)の春を迎えられます」
鎌足が代わって答えた。
ほう、という声が玄理と請安の口から同時にもれた。
「わたしどもが、いまの唐帝李世民の姿にはじめて接しましたのが、帝が二十歳のときでした。長安に無血入城を果たして、馬上さっそうと乗りこんでまいりましてね」
玄理が眼に感慨をにじませていった。
「いま、こうして皇子を拝しますと、あのころの思いが胸によみがえってまいります」