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【青雲の大和】(60)政略の夜 (1/2ページ)
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山田麻呂(やまだのまろ)の屋敷から帰ってすぐ、鎌足(かまたり)は中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)に会った。
二人が師としている南淵請安(みなぶちのしょうあん)の学堂へむかう途中である。
「どうだった、蘇我(そが)の麻呂は」
鎌足がなにもいわないさきに、中大兄のほうからきいてきた。
「首尾は上々でございます」
鎌足はそんな答え方をした。あくまでこれは政略である。
「話はうまく進んでいるのだな」
「いまのところ、妨げになるものはなにもございません。急がれたほうがよろしいかと存じます」
「で、麻呂の長女(えひめ)だが、会ったか」
「会いました」
「どうだ、いい娘か」
相手は妃(みめ)になる女性である。婿(むこ)としては、とうぜんの質問だった。
「それはもう……」
といって、鎌足はあとをにごした。気になっている点については、いわなかった。翳(かげ)があるといっても、鎌足がそう感じただけのことかもしれない。美しい顔立ちで、皇子が気にいられるのは確かだった。
「ご覧になりますか」
「会えるのか」
「適当な口実をもうけて、麻呂に宮中へつれてこさせるようにいたしましょう。ただし、おめどおりねがって、もし難点がないようでしたら、ただちにお召し入れという運びにさせていただきますが、よろしいですか」
情勢がさしせまっているのを、鎌足は肌で感じとっている。事態が動きだすまえに、権力をにぎる蘇我勢をなんとしても分断しておかねばならない。
「いいよ、進めてくれ」
中大兄はあっさりといった。むろん、いまの情勢を理解したうえでのことであろうが、いっぽうで、
−−そんないい女なら、