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【青雲の大和】(59)政略の夜 (1/2ページ)
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鎌足(かまたり)は山田麻呂(やまだのまろ)を射すくめるように、じっとみた。
いかにも人柄のよさそうな、麻呂の穏やかな瞳が少しとまどって揺れている。年頃になって気にかかっていた娘に、大君のご長男から思わぬ求婚がきた、そのことを素直によろこんでいるふうで、これが蘇我(そが)を分断するための政略であるとは、つゆほども疑っていない。
「やはり、鎌足どのが皇子(みこ)におすすめくださったのでしょうな。ありがたき幸せ、恩に着ますぞ」
鎌足なら入鹿(いるか)と親しく、蘇我の内情にもくわしい。どんな娘がいるか、よく知っているはずであり、いわば善意から中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)に推薦してくれたにちがいないと、そう思いこんでいる顔である。
「じつをもうしあげると、皇子はあのように若く明るく闊達(かったつ)なかたでありまして、宮中の采女(うねめ)らが放っておいてくれません」
鎌足は苦笑しながら話した。半分は事実である。
「ですから、一日もはやくきっちりとしたところから妃(みめ)を迎えませんと、御身のためにならずと、こう思いまして。もしよろしければ、至急この話を進めさせていただきたいのですが」
入鹿はいまの大君(皇極(こうぎょく)天皇)を廃し、蘇我系の古人大兄(ふるひとのおおえ)を立て、そしてのち、みずからが皇帝となる野望を着々と進めている。蘇我と戦わざるをえない日が、すぐにもこようとしているのである。蘇我勢を分断するためのこの政略も、のんびりとかまえているわけにいかない。
「よろしうございますとも」
山田麻呂はむしろ、うきうきとした調子で、
「さっそくですが、よんでまいりましょうか」