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【週末読む、観る】『サダム・フセインは偉かった』(新潮社・1470円)
イラクの独裁者、フセインが核開発をちらつかせ、化学兵器で民を殺戮(さつりく)したことはよく知られている。その悪漢を「偉かった」というのだから、本書がいかに毒舌と皮肉と逆説に満ちているかが分かろうというものだ。
著者の標的は大きく分けて3つある。
まず、傍若無人に振る舞うアンクル・サムである。米国は女性を社会に解放したフセインを滅ぼしてしまったと嘆く。イスラム教の国は女性を教育から遠ざけて家に閉じ込める。それを彼が解放したから、イラクは急速に国力を伸ばしたという独自の解釈だ。
次が、鼻息荒く追いすがるチャイニーズ・ドラゴンだ。米国に続くこの未来の超大国は、カネのためならウソも治安の破壊もへっちゃらな10億の民を抱えていると断定する。
そして3番目に、反日ネタなら真偽も問わない大新聞が控えているというのが、著者のキャッチコピーである。
いずれも頭が高くて強きもの。汝らの名は米国、中国、それに朝日新聞ということになる。その3つをまとめてくさすと、本書の次のような一説になろうか。
「朝日によると中国が今度は旅客機の生産を始めるという。だからデンソーなどから必要なデータを盗みためているのだろうか。マッカーサーが押し付けた空白を早く埋め戻して飛行機作りを始めないと、冗談ではなく“中国製”の飛行機に乗せられる羽目になる」
その「強きものには」もう一つ官僚が入るだろう。著者は、かつて米国三菱自動車イリノイ州工場で起きた嘘(うそ)のセクハラ告発で、企業が危機に陥ったというのに外交官がしらんふりだったと怒るのだ。
「総領事も配下の各省庁出向の10人の領事も知らんふりを決め込んだ。もっともこの出向組は官費で休暇にきていた連中でもともと仕事をする気もない」
著者の武器は痛快無比の筆誅(ひつちゆう)であり、暴くべきは「身勝手な正義」のまやかしである。官僚と朝日記者必読の書ではあるまいか。
(産経新聞東京特派員 湯浅博)
■たかやま・まさゆき ジャーナリスト。昭和17年、東京生まれ。東京都立大卒。産経新聞テヘラン、ロサンゼルス各支局長。元帝京大学教授。著書に『歪曲報道』など。