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【青雲の大和】(34)斑鳩の惨劇 (1/2ページ)
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網田(あみた)がふたたびそのことを口にしたのは、二人が鎌足(かまたり)邸を辞して皇居板蓋(いたぶき)の宮にもどる途中だった。
「おれは鎌足どののお心がよくわからないのだが、本心はどちらにあると思うか」
「どちら、というと?」
子麻呂(こまろ)は不審げな網田の顔をみた。
「ほんとうに蘇我(そが)を倒すご決意であるのか、それとも蘇我と手を組んでゆきたいというのが本心なのか……」
「そんなこと問題じゃない」
子麻呂は吐きすてるようにいった。
「ご本心がどちらにあるか、われわれが詮索(せんさく)することはないんだ」
戦場で司令官がある作戦行動を命じたとする。それが謀略であれ、なんであれ、その意味を兵はいちいち考えることはない。要はその司令官が信頼できるかどうか、それだけが兵にとって問題なのである。
「われわれは鎌足どのの身を守り、命じられるままに手足となって動けばいいのだ。手足が勝手に判断して、勝手に動きだしたらどうにもならんじゃないか」
「それはわかっている。わかっているつもりだが、しかし……」
網田はそういって眼を怒らせ、
「太子ご一族が皆殺しにされて、きさま、くやしくないのか」
と、またも憤懣(ふんまん)をぶつけてきた。
「万人がゆるしがたいと思っているんだ。いま、天下のすべてが入鹿(いるか)の暴虐に怒っている。父蝦夷(えみし)でさえ、怒りまくっているというではないか」
「だから、どうだというのだ」
「いまこそ起(た)つべきだ。おれはそう思う」
「三人で、か」