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【青雲の大和】(33)斑鳩の惨劇 (1/2ページ)
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館(やかた)に駆けこんできた子麻呂(こまろ)と網田(あみた)をみて、鎌足(かまたり)は奥の自室にふたりを招じ入れた。斑鳩(いかるが)の惨劇をすでに知っているようすである。
「で、ご一族のうち幾人(いくたり)が果てられたのか」
子麻呂が皇居板蓋(いたぶき)の宮で高向国押(たかむこのくにおし)からきいたことをかいつまんで報告すると、その点だけを鎌足は質(ただ)した。
「山背大兄(やましろのおおえ)ほか、ご一族はことごとく亡くなられたときいておりますが、詳細については蘇我(そが)もつかんでいないもようです」
子麻呂が答えるのをうけて、網田がよこから、
「鎌足どのはゆるされるのでありますか、この大罪を」
と、声をとがらせていった。
「そのことだが、考えるところがあって、なおしばらくは蘇我に同調するかたちをとりたい」
鎌足は冷静だった。ゆうぜんとしたその顔を網田が、じっとみつめている。
「蘇我に同調するということは、あえて罪をとわないというふうに理解してよろしいのでしょうか」
網田の思いを代弁するつもりで、子麻呂はきいた。
「世間がそうみるようにしたい、ということである」
子麻呂には、その意味がよくわからない。
「つまり、あえて罪をとわず蘇我と手を組んでいく、そういうおつもりなので……」
「さよう、世間がそう思いこむようにもっていきたいので、きみら二人もそのようにふるまってもらいたい」
「いつまでつづけるのですか」
網田はやはり不満げである。
「だから、皆がそう思いこむようになるまでだ」