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【青雲の大和】(30)斑鳩の惨劇 (2/2ページ)
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網田はそれをどう理解したのか、神妙にうなずいている。
「よいか、二人にこのさい、はっきりといっておきたい。われらが力をあわせて成そうとしているものはなにか」
それをきいて子麻呂は、はっとして鎌足の顔をみた。このようなことを鎌足の口から告げられるのは、はじめてだった。
われらが力をあわせて、ということばを信じるなら、いまや子麻呂と網田は、鎌足の手下というのではなく、同志としてあつかわれているのである。
「それは一人の皇族を救うことではないのだ。われらは一人の山背大兄を救うために働いているのではない。われらが救わねばならないのは、この大和の国である。国を救うためには一人の皇子に死んでいただかねばならないときもある。そのことをあらためて、覚悟しようではないか」
子麻呂はからだがふるえてくるのを抑えかねていた。なにか大きなものに身がくるまれ、宙にうきあがる感じである。子麻呂にとって、いわば人生はじめての覚醒(かくせい)のときでもあった。
「わかりました。やつがれ、一身を投げ打って、仰せのように尽くしますれば、なんなりとお命じくださるように」
子麻呂は熱に浮かされたように、鎌足のまえに誓いのことばを述べたてていた。