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【青雲の大和】(28)斑鳩の惨劇 (1/2ページ)

2008.1.14 09:50
このニュースのトピックス青雲の大和

 寒風の吹きすさぶなか、佐伯子麻呂(さえきのこまろ)は馬に鞭(むち)をあてつづけていた。いまは一刻もはやく鎌足(かまたり)に、生駒(いこま)でおきている事態を知らせなければならなかった。

 このままでは山背大兄(やましろのおおえ)の命が蘇我(そが)にうばわれるのは必至である。山背大兄だけではない。斑鳩(いかるが)の宮に住んでいた太子一族がことごとく、蘇我の権力によって地獄へ追いやられるのは眼にみえている。

 いまもって信じられないことながら、山背大兄は一族を連れ、生駒の山を下りてきてしまったのである。

 むろん、子麻呂は必死に止めた。側近の三輪文屋(みわのふみや)をとおして、脅しあげるばかりに翻意をうながした。が、ついにききいれてもらえなかったのである。

 鎌足の指示により、東国へ一族を護衛していくつもりで生駒にはいった子麻呂は、鎌足がえがいてみせた東国美濃(みの)で雌伏する案をけんめいになって山背大兄に説いた。

 すでに三輪から策をきいていた山背大兄は、

「なるほど、汝(いまし)らのいうように、東国で力をたくわえるなら、いつかかならず蘇我を討てる。しかし、われはその策をもちいるつもりは毛頭ないから、そのつもりで」

 といって、勧めに応じようとしなかった。

「では、どうなさるおつもりか」

 と、子麻呂は三輪をとおして尋ねたが、いっこうに要領をえない。

「いまはまだ、蘇我は大兄皇子(おおえのみこ)が斑鳩の宮の火中に亡くなったものと思いこんでおりますが、いずれは気がつきましょう。それまでにはやく、せめて深草(ふかくさ)の屯倉(みやけ)へなりとも、お逃げになっていただきますように。でなければ、お庇(かば)いもうしあげることができませぬ」

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