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【青雲の大和】(26)入鹿と鎌足 (1/2ページ)

2008.1.13 09:02
このニュースのトピックス青雲の大和

「いや、ただちにわれが帝位につくというのではない」

 鎌足(かまたり)の心をみすかしたように、入鹿(いるか)はいった。

「とりあえずは古人大兄(ふるひとのおおえ)だ。古人をたてる」

「しかし、情勢をみて古人大兄を降ろし、あなた自身が立つというのであろう。それをわれわれ臣民はみとめることができない、といっているのだ」

「なぜだね、鎌足」

 入鹿は嫁取りの相談でも持ちかけるように、気軽な調子でいった。おそらくは史上はじめてとなる大和の革命を、入鹿はさほどのことと思っていないようである。

「あなたは大和の皇族ではない。天皇家の血ははいっていないのだ」

「それがどうしたというのだ。唐帝李世民(りせいみん)はいかにして皇帝となったか、師の講話を忘れたか」

 旻師(みんし)は李世民が長安(ちょうあん)への無血入城をはたし、まず隋帝、煬帝(ようだい)の孫を皇帝に立てたうえ、情勢をみて帝室を簒奪(さんだつ)して父李淵(りえん)を即位させた、その手順を実際にみておられるのである。

 李世民はその後、皇太子であった長兄と末の弟を殺し、さらにそれぞれの子息十人を皆殺しにして、みずからが帝位についた。いま、唐は貞観(じょうがん)の治(ち)とよばれる繁栄の時代をむかえているが、唐帝李世民は血と武力でこの治世を勝ち取ったことになる。

「われが山背大兄(やましろのおおえ)を殺し、古人大兄を屠(ほふ)ったとしても、この大和に貞観の治を実現させればいいのだ。それこそが天命というものだろう。ちがうか、鎌足」

 問われて鎌足はとっさに反論できず、押し黙ってしまっていた。ちがう、ということはいえる。しかし、どこがどうまちがっているのか、となるとうまく論じられないのである。

 それを肯定、と受けとったのか、入鹿はさらに熱心に言いつのった。色白の顔に血がのぼり、赤みがさしている。

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