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【青雲の大和】(24)入鹿と鎌足 (1/2ページ)
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入鹿(いるか)が入鹿なりに大まじめなのをみてとると、鎌足(かまたり)はいった。
「ならば、わたしもまことの心をもってもうしあげよう。きょう、なぜ、わたしはここ恩師の学堂へきたか」
山背大兄(やましろのおおえ)を救うためである。入鹿を説得して、攻撃をやめさせなければならない。しかしそうといえば、山背大兄が斑鳩(いかるが)の宮を脱し、一族とともに生存していることを入鹿に教えてしまうことになる。
危険な賭けだった。いま、入鹿は山背大兄が火中に死んだと思いこんでいる。その入鹿に真実を知らせ、蘇我(そが)勢による再度の攻撃をまねくことになりかねない。
「太郎どの、わたしはあなたを信じている」
鎌足は意を決していった。
「信じているから、もうしあげるのであるが、山背大兄は生きておられる」
「なんだと」
入鹿の顔色が変わった。
「もう一度もうしてみよ」
「山背大兄は斑鳩の宮の大殿で焼死されたことになっているらしいが、じつは生きておられる」
「どういうことだ、巨勢(こせ)の臣(おみ)が大殿の焼け跡で確認したはずだが」
「なにかのまちがいでしょう。とにかくわたしは、山背大兄のお命をたすけなければならないのだ。太郎どの、ここは退(ひ)いてもらえまいか」
入鹿の眼が血走ってきていた。三百人もの部隊を動員して斑鳩襲撃に失敗したとなると、天下大乱の火だねを消すどころか、火をつけてまわっているようなものである。
「どこにいる」
入鹿の声の質が変わってしまっていた。
「山背はどこにいるのだ。言え、鎌足」
「あなたが山背大兄の生命を保証しないかぎり、それを明かすことはできない」