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【青雲の大和】(13)入鹿と鎌足 (1/2ページ)
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鎌足(かまたり)には、山背大兄(やましろのおおえ)が危機に直面して判断力を失ってしまっているとしか思えない。
蘇我(そが)勢の急襲に遭って夜間に生駒(いこま)の山中に逃げこみ、陣を布(し)いて父、聖徳太子の威光にすがりつつ、諸氏の来援を待つというのは、どうみても正気の沙汰(さた)ではなかった。
「で、その山中の陣に、いま兵として使える者は幾人いるかですが、いかがでしょう」
相手が長く斑鳩(いかるが)の宮に仕えてきた年長者であるので、ていねいな話し方をしているが、鎌足にすれば叱咤(しった)したいほどの気持ちだった。
「舎人(とねり)は十人ほどしかいないが、従僕におそろしく強いのが一人おります。この者が押し寄せる蘇我兵に立ちはだかり、攻撃を防いでくれているあいだに逃げることができたというわけです」
「従僕というと、やつこ(奴)でしょうか」
いわゆる奴婢(ぬひ)の身分である。
「さよう、やつこの三成(みなり)ともうして、これほどの豪(ごう)の者が斑鳩の宮にいたとは、いまのいままで気づきませんでした」
「それはたのもしい。しかし、まともに戦えるのがその者一人では、いかんともしがたいのではありませんか。このさい、はっきりともうしあげる。大伴(おおとも)は山背大兄にご加勢することはできませぬ」
鎌足があえて突き放すようにいうと、三輪(みわ)は青ざめた顔をむけてきた。
「それは大伴の連(むらじ)のおことばか、それとも……」