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【青雲の大和】(12)入鹿と鎌足 (1/2ページ)
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「ちょっと待っていただきたい」
青ざめた顔に必死なものをうかべて、使いの旨(むね)を述べたてる三輪文屋(みわのふみや)をまえに、鎌足(かまたり)はことばをさしはさんだ。
「山背大兄(やましろのおおえ)の皇子(みこ)がご無事であったよし、まずはよろこばしいことではありますが、いまどこにおられるのでしょうか」
陣中にあって大伴(おおとも)ほか諸氏の来援を待っている、と三輪はいった。蘇我(そが)兵の包囲網をくぐってどこへ逃れ、どこに陣を布(し)こうというのか、ちょっと信じられない話である。
「それはいま、もうしあげかねる」
三輪は蘇我に情報がもれるのを恐れてか、即答をさけた。
「斑鳩(いかるが)の宮を無事脱出されたのは、確かですね」
「わたしどもがお助けして、逃げていただいたのです」
「包囲され、焼き打ちに遭ったとききましたが、どこから、どのようにして抜けでられたのでしょうか」
「それもいま、答えられません」
「なぜ」
「その門をまもっていた将兵が科(とが)をうけることになるからです」
「見逃してくれたということでしょうか」
三輪は黙ってうなずいた。
いまなお、国民の崇拝をあつめる聖徳太子の子息である。蘇我から命令がでているとはいえ、門に詰めていた将兵は山背大兄をほうむりさることができなかったにちがいない。
そのとき、大伴邸の従僕が三輪の傷の手当てをすべく薬草と布をもってはいってきた。
三輪はこの従僕にさえ気をゆるさず、座をはずさせるよう鎌足に小声で促した。
「ぶしつけなことをもうしあげるようであるが、三輪どのは大伴を山背大兄のお味方に引き入れんがためにまいられたのではなかったか」
鎌足はその用心深さをむしろ、とがめるようにいった。