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【青雲の大和】(8)急襲 (1/2ページ)
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斑鳩(いかるが)の宮には、太子存命中からひきつづき山背大兄(やましろのおおえ)をはじめ太子一族が住んでいる。
山背大兄は十五年まえ、田村皇子(たむらのみこ)(舒明(じょめい)天皇)と皇位をあらそって敗れたあと、政(まつ)りごとの前面から身をひいたかたちになっている。
−−まさか、
と、網田(あみた)は思った。その山背大兄を巨勢徳太(こせのとこだ)は三百人の部隊で討とうとしているのだろうか。
むろん、指令したのは権力をにぎる蘇我入鹿(そがのいるか)であろう。しかし、なぜ蘇我がいま、斑鳩の宮に襲いかからねばならないのか、である。
山背大兄はまぎれもない蘇我系である。母、刀自古郎女(とじこのいらつめ)はあの蘇我馬子(うまこ)の娘である。その蘇我系皇族を討ちほろぼさねばならない理由が、入鹿にあろうはずがなかった。
−−あるいは斑鳩の宮が何者かに襲われるということで、護衛のためにむかうのか。
網田はそう思ってみたが、気休めにすぎないことは自分でもわかっていた。
総大将の巨勢徳太が、はじめて網田ら部隊長をまえに斑鳩襲撃の意図をあきらかにしたのは、未明に部隊を休止させ、兵に腹ごしらえをするよう命令がでたあとだった。
部隊長五人を帷幕(いばく)によびよせ、巨勢はこう告げたのである。
「これより斑鳩の宮に急行し、暁(あかつき)を期して包囲襲撃する。ねらいは山背大兄の御首(みしるし)である」
五人の者は一瞬、息を呑んで立ちつくした。
「なぜでありますか」
網田は思わず、抗議の声をあげていた。
「なぜ斑鳩の宮をほろぼすのでありますか」