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【青雲の大和】(205)新羅の砦 (1/3ページ)
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玄理(くろまろ)が副使の中臣押熊(なかとみのおしくま)と随員の文麻呂(ふみのまろ)をともなって、特別仕立ての遣使船で難波(なにわ)の港をでたのは、きれいに澄みきった冬の日のあさだった。
港の施設の展望台に立って見送る鎌足(かまたり)、日文(にちもん)、請安(しょうあん)らの姿がしだいに小さくなってみえなくなると、玄理はすぐに文麻呂を船室のなかの主座へよんだ。
文麻呂には出港のぎりぎりまで、難波にきている新羅(しらぎ)人らをとおして本国の動きをさぐらせていたのである。
「大使、唐からすでに廉宗(れんそう)が帰ってきておりますぞ」
いきなり文麻呂は報告した。
新羅の女王徳曼(とくまん)を廃し、唐から新王を迎えいれようと画策している反女王派の重臣である。
「もう女王廃位の動きが、はじまっているということか」
玄理はいった。そうだとすれば、両派対立のまっただなかへ乗りこんでいくことになる。
「いえ、そうではございません」
文麻呂は自信をみなぎらせて答えた。新羅から難波にきたばかりの使人と接触して、現況をききだしたのだという。