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【産経抄】10月31日
このニュースのトピックス:マンガ
「赤胴鈴之助」は50年ほど前、子供たちが心をおどらせた漫画の主人公、少年剣士である。漫画ばかりでなく映画、ラジオ、テレビでもドラマ化された。漫画と映画で「真空斬り」の技が違っていたのは愛嬌(あいきょう)だが、とにかく大変な人気者だった。
▼昭和30年前後は、月刊誌や貸本を中心とした子供向け漫画の全盛期である。中でも人気は「赤胴鈴之助」の剣道や「イガグリくん」などの柔道といった「武道もの」だった。少年が剣道や柔道を学びながら、心身ともに立派に成長していくという物語であった。
▼敗戦で日本人が持っていた価値観がズタズタになった時代に、子供たちが出合ったのが伝統的な武道だったのである。それも強さにばかりでない。「弱きを助け、強きを挫(くじ)く」といったその「心」にだった。このころから学校での武道が再び盛んになったような気もする。
▼その「赤胴鈴之助」の漫画本が小学館クリエイティブと少年画報社から相次いで復刻されるという。とりわけ、10歳前後を鈴之助とともに生きた「団塊の世代」の人たちにはたまらない企画だろう。恐らく復刻本のターゲットも定年を迎えるその世代に違いない。
▼しかしそれだけではないはずだ。小学館クリエイティブでは「礼節やきずななどが色濃く描かれているこの作品を、家族でもう一度読み返してもらいたい」としている。生き方の規範が失われつつある現代にこそ、復刻する意味があるということなのだろう。
▼そういえば、中教審も学習指導要領改定の一環として、中学校体育に武道を必修化することを打ち出した。今の学校から一人でも多くのエジソンや野口英世が出てほしい。だがそれ以上に、多くの赤胴鈴之助やイガグリくんも育ってほしいのである。