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【書評】児童書 『うちの一階には鬼がいる!』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作
■混乱通じ結ぶ家族の絆
お行儀が良いだけの話は、真に魅力的な児童文学たり得ない−−この話の主人公は、ちょっと不満を抱えた子供たちである。その不満のいくつかは、きっと読み手の共感を呼ぶだろう。静かにしなさい、いい子にしなさい、早く寝なさい……どこの家でもくり返されるに違いないこの台詞(せりふ)に、子供たちはイライラしている。最悪なのは、叱(しか)りつけてばかりの父親。これが、本書の題名にいわれる「鬼」の正体だ。
子連れ男女の再婚で、できあがったばかりの家族はバラバラだ。男親の息子2人と、女親の息子2人と娘1人は、まだとても兄弟なんて感覚はもてない。そのかれらを結びつけたのは、魔法の実験セット。
空を飛べたら、無生物が動きだしたら、透明になれたら……荒唐無稽(むけい)な楽しいできごとは、現実には厄介な現象でもある。空を飛ぶ薬の効きめが切れたら? 動きだした無生物のコントロールができなかったら? ひとりでは対処しきれない事態に、はからずも兄弟たちは協力し合うほかなくなってしまう。どなりあい、おまえのせいだとののしりながら、それでもしっかりと「家族」になっていく。
おとなしく、お行儀よく、と大人におさえつけられていただけでは結びつかない家族の絆(きずな)が、魔法がもたらした混乱を通じてしっかりと繋がる、その過程が楽しい。
大人の視点から読んでも、これがまたおもしろい。子供たちから「鬼」扱いされる原因はなんなのかを、主人公の子供たちからは少し距離を置いた視点から、じっくり考えることができるだろう。どうやって、親子の溝が解消されていくのか。そのカタルシスを、ぜひ子供と一緒に味わってほしい。(原島文世訳/東京創元社・2100円)
ファンタジー作家 妹尾ゆふ子
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【プロフィル】ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
Diana Wynne Jones 英国を代表するファンタジー作家。1934年、ロンドン生まれ。『魔女と暮らせば』でガーディアン賞。