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【安野光雅が描く 日本のふるさと奈良】正暦寺への道
紅葉の美しさから「錦の里」と称される正暦寺(しょうりゃくじ)。奈良市内から山の辺の道を南に下り、菩提山(ぼだいせん)川を上流に向かった山間にある。その正暦寺に向かう菩提山川沿い(奈良市北椿尾町)で安野さんは写生した。
一条天皇の発願により、関白九条兼家の子、兼俊が正暦3(992)年に創建したことから正暦寺と呼ばれる。かつては86の堂宇や伽藍(がらん)が並び立ち、興盛を誇ったが、平重衡の焼き討ちや明治の廃仏毀釈(きしゃく)で現在は本堂、鐘楼、福寿院を残すのみ。菩提山川の渓流に沿う山道には苔(こけ)むした石垣が続き、往時がしのばれる。
「日本清酒発祥之地」の碑が立っている。境内を流れる菩提山川の清流の水を使って、清酒(すみさけ)が初めて造られたと伝えられるためだ。鎌倉時代、荘園からあがるコメを用いて僧によって「僧坊酒(そうぼうしゅ)」が造られていたのがその由縁らしい。
境内のカエデが色づく晩秋は、山内全体が美しい錦で着飾ったようになる。正暦寺へ向かう黄色く色づいた木々を描いた安野さんは、晩秋の風情を感じた。
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