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【写眼】原芳市「幻の刻」 薄れゆく境界線 描き残す
「さすらう、というのに興味があって」写真学校時代に地方をめぐった。サーカスの団員になったこともある。そのうち全国を巡回するストリップ嬢を撮りたいと思いはじめた。
「最初は好奇心ですね。撮ってるうちに、すごくリアルな印象を受けた。たとえば、踊ってる女性の足の裏が汚かったりする。リアルな女性がそこにいる。お客さんも何かをさらしてる感じがする」
踊り子に紹介されて、別の踊り子を撮る。原芳市(よしいち)(61)は、そんな劇場通いを36年続けている。週刊誌に連載を持つ最近は「週に3人ずつ撮ってます」。撮った人数を数えたことはないそうだが、歴史の記録者、と呼べるだろう。
ストリップを「文化」と語りたくはないそうだ。「たしかに日本独特の文化だと思いますけど、文化だと言ったとたんに面白くなくなる。支離滅裂でスリリングでないと…」
そんな業界は斜陽のまっただ中。本展では、閉鎖されてしまった劇場の風景を古いネガから再プリントした。ダンサーは写っていない。主役を欠いた風景は、この雪にかすむ看板のように、はかなさを漂わせる。
「時間というのは、過ぎてしまえば幻みたいなところがある。ちゃんと写っているのに、なかったんじゃないかと思えたりします」
かつてはエロスと日常生活との間に、きちんと境界線があった。現代社会はすべてをあいまいにしてしまった。作品は、薄れゆく境界線を描き残そうとしているようにもみえる。(篠原知存)
◇
≪原芳市写真展「幻の刻」≫
6〜19日、東京都新宿区新宿1の3の5、ギャラリー蒼穹舎。浅草フランス座など消滅したストリップ劇場の風景ばかりを集めた作品展。1970年代の空気を濃厚に伝える約40点を展示。TEL03・3358・3974。
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